NVIDIAが2026年10月30日に公開したチュートリアルは、数個のコマンドでローカルのOpenAI互換APIサーバーを起動し、クラウドAPIの代わりに機器上でエージェントを試す手順を紹介している。候補トークンを先に提案する高速化機能を有効にした同社の測定では、最初の応答までの待ち時間はほぼ変わらなかったが、その後の文章の生成速度は向上した。

対象はDGX Spark 64GBで実行したNemotron-3.5 Lightningだ。以下の数値はいずれもNVIDIAの発表に基づく。

結果

条件:DGX Spark 64GB・DGX OS 7.6.0(Ubuntu 24.04.4 LTS)・Edge-LLM 0.11.1・Nemotron-3.5 Lightning 30B-A3B NVFP4(4ビット浮動小数点量子化)。推論過程を実行するthinking設定が有効、バッチサイズ1、同時ストリーミング1件、出力上限128トークン、DSpark使用時の候補トークンは3個。平均入力は表の順に1,153/2,247/139トークン。出典はNVIDIA技術ブログの表1。

表:DSparkの使用有無による生成速度と最初のトークンの遅延

単位:生成速度 tok/s、最初のトークンの遅延 ms

結果
デコーディングのワークロードDSpark未使用時の平均生成速度DSpark使用時の平均生成速度DSpark未使用時の最初のトークンの遅延中央値DSpark使用時の最初のトークンの遅延中央値
SpeedBench 1K73.3108.5201.0203.0
SpeedBench 2K72.8105.3329.5331.6
HumanEvalプロンプト73.4126.998.198.7

表の値から計算すると、HumanEvalの生成速度は73.4→126.9 tok/sと約72.9%、2つのSpeedBenchの結果は約44.6~48.0%向上した。一方、最初のトークンまでの時間(TTFT)の中央値の差はいずれも2.1ms以内だった。生成速度は最初のトークンまでの時間を除いた値なので、改善は最初の応答よりも、その後のトークンをつなぐ区間に集中していた。

入力が最も長いSpeedBench 2KでTTFTが最も長く、HumanEvalで最も短い。DSparkを有効にしてもこの順序は変わらず、候補トークンの検証を追加するコストが最初のトークンの遅延を大きく増やすことはなかった。

機器・方式別の性能ドキュメント比較

条件:TensorRT Edge-LLM 0.10.0ランタイムのスループットダッシュボード、llm_inferenceによる測定、Nemotron-3.5-Lightning-30B-A3B NVFP4、バッチサイズ1、入力処理区間66トークン。出典はNVIDIA公式の性能ドキュメント。

表:推論高速化方式・機器別の生成速度と平均採用長

単位:生成速度 tok/s、平均採用長 トークン/検証ステップ

推論方式別のDGX SparkとJetson AGX Thorの生成速度 (tok/s)通常生成: DGX Spark (GB10)の生成速度 75.6, Jetson AGX Thorの生成速度 81.6; MTP: DGX Spark (GB10)の生成速度 93.2, Jetson AGX Thorの生成速度 95.3; DFlash: DGX Spark (GB10)の生成速度 61.5, Jetson AGX Thorの生成速度 58.7DGX Spark (GB10)の生成速度Jetson AGX Thorの生成速度通常生成75.681.6MTP93.295.3DFlash61.558.7
推論方式別のDGX SparkとJetson AGX Thorの生成速度 (tok/s)
機器・方式別の性能ドキュメント比較
推論高速化方式DGX Spark (GB10)の生成速度平均採用長Jetson AGX Thorの生成速度平均採用長
通常生成75.6—81.6—
MTP93.22.7095.32.69
DFlash61.52.2358.72.22

MTPは次の複数のトークンを予測するよう学習させる手法で、DFlashはドラフトモデルで候補のまとまりを一括生成する方式だ。平均採用長は検証1回あたりに採用されたトークン数を指す。MTPは両機器とも通常生成より速かったが、DFlashは遅かった。採用されたトークン数だけでなく候補の生成・検証コストも速度向上を左右するため、採用長と最終的な生成速度を併せて見る必要がある。

なぜこのような差が生じるのか

DSparkを有効にしたときに減るのは、メインモデルを繰り返し実行する回数だ。ドラフトモデルが候補トークンのまとまりを先に提案し、メインモデルがそれを一度に検証するためだ。

選ぶ際の基準

対話型リクエストが主な目的なら、Nemotron-3.5 Lightningのモデルカードは、DGX Sparkや低同時実行数で遅延に敏感なサービングにDSparkを標準で推奨している。タスクによっては高速化を無効にしたり、DFlash・MTPを使ったりする方が適する場合もあるため、候補トークン数を変えて比較するのがよい。データセンターのバッチスループットが目的の場合、NVIDIAは同モデルカードで、1× H100の最大スループット向けバッチにおけるvLLMとhummingバックエンドの構成は、speculative decodingを使わない方が最も速いと案内している。この推奨はH100のバッチ処理に関するものだ。

ローカルで実行する

チュートリアルはCUDA 13・TensorRT 10.16.1.11・Python 3.10~3.12の環境を前提としている。システムパッケージにアクセスできる仮想環境にtensorrt-edgellm[server]==0.11.1をインストールした後、次のコマンドで対話を始める。

trtedge chat nvidia/NVIDIA-Nemotron-3.5-Lightning-30B-A3B-NVFP4

ローカルAPIは同じモデルIDを指定したtrtedge serveで起動する。同じリクエストで、高速化を無効にした基準値と候補トークン3個を有効にした結果を比較できる。

生成区間を高速化する利点と最初の応答を待つ時間は別なので、ローカル対話の高速化効果は2つの指標を分けて判断するのがよい。