Moonshot AIは、長い文書や大規模なコードベースを扱う開発チームに向けたKimi K3.1 Proを公開した。100万トークンのコンテキストとダウンロード可能なモデルウェイトを提供し、開発チームはAPIで利用するか、自社インフラに展開できる。

1. 長い資料をまとめて扱う100万トークンのコンテキスト

Kimi K3.1 Proは、Kimi K3を基に、既存モデルを追加訓練する段階である事後学習を拡大した新シリーズの最初のモデルだ。同社は、報酬に応じて性能を高める強化学習により、数百のタスク分野をまとめて追加訓練したと発表した。そのために、学習と回答の計算を支える基盤も改善したと説明した。

モデルカードによると、正確なコンテキスト長は1,048,576トークンで、テキストと画像を入力として受け付ける。モデル全体が学習した数値であるパラメータは2.8兆個だが、入力トークンごとに1040億個を活性化する構造だ。大きなモデルの一部だけを選んで計算する方式である。

同社は、入力全体の関係を計算していた一部の層を、必要な関係を選んで計算する方式に変え、長いコンテキストをより効率的に処理すると説明した。

公開リポジトリには、ウェイトが96個のファイルに分割して掲載されている。

2. コーディングと金融文書の評価で示した成果

同社の発表によると、ターミナルで実際のタスクを解決するTerminal-Bench 4.0のスコアは65.7%だ。最大の推論設定でClaude Codeを評価実行ツールとして使用し、出力候補を選ぶサンプリング設定は下記の金融文書評価と同じだ。

多段階の実行とツール使用を見る社内の長期コーディング評価では61.2%で、従来モデルの55.95%を上回った。

同社の発表によると、複数方向の画像から3次元形状を復元するBenchCADのスコアは、ツール使用時に92.7%だった。これは全17,900件の事例から無作為に選んだ1,000件を、最大の推論設定とClaude Codeで評価した結果だ。

金融文書を分析するOfficeQA Pro v2では、同社の発表として以下の結果が示された。3モデルとも全PDF資料をページ画像として受け取って処理し、Claude Codeで評価しており、表にはこの共通条件を満たす公開モデルだけを選んだ。

表:金融文書分析評価における公開モデルの結果

条件:OfficeQA Pro v2、全PDFを画像として提供・機械可読テキストなし、Claude Code、最大の推論設定。Kimiのサンプリング設定はtemperature = 1.0、top-p = 0.95

単位:評価スコア

金融文書分析評価における公開モデルのスコアKimi K3.1 Pro: スコア 64.4; DeepSeek-V4.1-Flash-1017: スコア 40.4; GLM-5.3: スコア 31.1Kimi K3.1 Pro64.4DeepSeek-V4.1-Flash-101740.4GLM-5.331.1
金融文書分析評価における公開モデルのスコア
コーディングと金融文書の評価で示した成果
モデルスコア
Kimi K3.1 Pro64.4
DeepSeek-V4.1-Flash-101740.4
GLM-5.331.1

同じ文書入力方式と評価ツールで評価した場合、KimiはDeepSeek-V4.1-Flash-1017より24.0点、GLM-5.3より33.3点高かった。この評価は文書間の照合と多段階の数値推論を扱うため、長い資料を受け取る能力だけでなく、根拠を探して回答を完成させる実用性を示している。

同社の発表によると、数式の連携と財務ロジックを見る独自の金融モデリング評価では、従来モデルより7.2点改善した。監査可能な根拠を備えたリサーチかどうかを見る金融リサーチ評価では、11.6点改善した。

同社の発表によると、社内の事実性評価における主張単位のハルシネーション率は23.4%から8.3%に低下した。これは、回答内の個々の事実に関する主張のうち、誤った主張の割合だ。ハルシネーション率は、誤りが生じやすい事例を集めたストレス評価の結果であり、日常利用の全体的な誤り率ではない。

3. APIで利用するか自社サーバーに展開

ブログの利用案内によると、ウェブとモバイルアプリで利用できる。業務用のKimi Workデスクトップアプリは3.1.0以上が必要だ。

Kimi Codeでは、/modelコマンドでモデルを選択する。

Kimi APIはOpenAIとAnthropicの互換仕様をサポートする。API顧客は、データを保持しない選択肢も利用できる。

自ら展開する際、同社が推奨するモデルの回答を計算する推論エンジンはvLLMやSGLangなどだ。Hugging FaceページのvLLMのインストール・実行例は以下の通りだ。

# Install vLLM from pip:
pip install vllm
# Start the vLLM server:
vllm serve "moonshotai/Kimi-K3.1-Pro"

複数回の会話やツール呼び出しを行う際は、APIが返したアシスタントメッセージ全体を、次のリクエストにそのまま渡す必要がある。モデルカードは、推論内容とツール呼び出しの記録まで保持するよう求めている。

4. 運用の管理権とともに移る負担

長いコンテキストは資料を細かく分けて入力する作業を減らせるほか、ウェイトの公開は組織による自社運用や修正・再配布を可能にする。その代わり、2.8兆個のパラメータを持つモデルの保存と推論に必要なインフラの負担は、直接運用する組織に移る。

ライセンスは修正・商用利用を認めている。ただし、利用者や関連会社が第三者向けに入力・パラメータ・学習データを実質的に制御できるモデルサービスを運営し、それらの合算売上高が連続する12か月で2千万ドルを超える場合、商用利用前に別途契約が必要だ。特定の機能だけにモデルを組み込んだ最終製品と、他社がホストするモデルへリクエストを単純に中継するサービスは、このモデルサービスの定義から除外される。

商用製品・サービスの月間アクティブユーザー数が1億人、または月間売上高が2千万ドルを超える場合、画面にモデル名を目立つよう表示する表示義務がある。内部利用と、公式製品・認定推論パートナーを通じた利用には、別途契約と名称表示の条件は適用されない。

Kimi K3.1 Proの要点は、長い資料を扱う能力と運用の管理権をともに提供し、開発チームの選択肢をサービス利用から自社展開まで広げたことにある。