Ricursive Intelligenceが、開発者向けの機器でも実行できる言語モデルの重み(学習で調整されたモデル内部の数値)とサーバー実行構成を公開した。コーディングを任せるモデルを探す開発者は、外部サービスの利用だけでなく、自らダウンロードして運用する方法も選べる。
1. コーディングに重点を置いた汎用モデル
Ripple-65B Previewは汎用モデルで、初期公開版はエージェントコーディング(モデルがツールを使いながらコーディング作業を行う用途)に重点を置き、比較的軽い事後学習を施した。
モデルは650億パラメータで構成され、12兆トークンで事前学習し、最大100万トークンのコンテキストに対応する。
公開パッケージには、指示に従うよう追加学習したモデルと、事前学習のみを終えたベースモデルが含まれる。指示学習モデルは、高精度のBF16形式と容量を削減した低精度のNVFP4形式で提供される。同社はローカル開発向けにNVFP4チェックポイント(保存されたモデルの状態を収めたデータ)とColab用資料を提供すると述べた。ライセンスはApache 2.0だ。
配布経路はHugging Faceとクラウドサービスに分かれる。同社はTogether AI、GMI Cloud、OpenRouterで利用できると案内した。
2. 共通の評価ツールでもコーディングスコア首位
同社発表によるTerminal-Bench 2.1のスコアは80.52だ。モデルカードの表では80.5と表記し、比較モデルはBF16精度と推論の労力を最大にした設定で評価したと説明している。
モデルカードは、各社の自己報告スコアと共通の評価ツールを適用した結果を別々の行に示した。以下は同じ作業実行・採点ツールであるTerminus 2を使った行で、シーケンス長128Kと要約機能を適用した比較だ。
表:共通の評価ツールを適用したコーディングベンチマーク
条件:同社モデルカードのTerminal-Bench 2.1 (Terminus 2)行、BF16精度・最大労力設定、公式Terminus 2ハーネス・128Kシーケンス長・要約を使用
単位:スコア
| モデル | スコア |
|---|---|
| Ripple-65B Preview | 80.5 |
| Nemotron 3 Ultra 550B | 55.1 |
| Inkling 975B | 56.2 |
| Muse Spark Open 816B | 78.7 |
| Reflection Beam 501B | 70.8 |
同社発表によるこの比較で、Rippleは次点のMuse Spark Openの78.7を1.8点上回った。モデルカードは評価ツールと要約設定によってスコアが変わると説明しており、導入の判断には表に記載された評価条件も併せて適用する必要がある。
3. 単純な構造とトークンごとの演算量のトレードオフ
同社は学習・サービング(モデルをリクエストに応答できるよう運用する過程)のインフラを単純化するため、トークンごとに一部のパラメータだけを使う混合エキスパート型ではなく、全体を使う密結合型の構造を選んだ。内部は幅を狭くし、層を深く積む方式で設計した。
この選択は、ローカル機器に収まるモデル全体のサイズと単純な運用構造を得る代わりに、トークンごとに650億パラメータを処理するコストを払うトレードオフだ。同社が比較した混合エキスパート型モデルは全体のサイズが大きい一方、トークン当たりのアクティブパラメータ数は230億~550億だ。全体のサイズは機器のメモリにモデルが収まるかを、トークン当たりのアクティブパラメータ数は生成時の演算負荷を見積もる基準となる。
同社発表によると、開発から最終学習までの研究開発費総額は3200万ドルで、同社が推定した従来のエージェントコーディング首位のオープンウェイトモデルの費用の10分の1だ。事後学習データは購入せず、独自の合成データパイプライン、つまりデータの生成と処理を自動化する流れを構築したと説明した。
4. ローカル機器とデータセンターでの実行経路
同社は、モデルをNVIDIA DGX Sparkなどの消費者向け機器に収められると述べた。同社の説明では、DGX Sparkはデータセンター用アクセラレーターよりもメモリ帯域幅に対する演算能力が高い機器だ。Rippleは保存容量全体を抑えながらこの演算能力を活用する設計で、密結合型というだけでローカル実行に有利なわけではない。データセンターでは同社発表によると、B200を2枚、バッチサイズ8(一度にまとめて処理する入力の数)で、量子化(数値精度を下げて容量を減らす手法)と専用カーネルを適用する前の条件で毎秒250トークンを生成した。
サーバーの案内では、BF16モデルにDFlash2ドラフトモデルを組み合わせる実行例を提供している。ドラフトモデルは、次に出るトークン候補を先に提案する役割を担う。
実行環境はSGLang 0.5.19を使用し、LinuxとCUDA Toolkit 13、C++コンパイラー、uvが必要だ。以下のコードはリポジトリのサーバー案内に掲載されたままのものだ。
export CUDA_HOME=/usr/local/cuda-13.0
export PATH="$CUDA_HOME/bin:$PATH"
CUDA_VISIBLE_DEVICES=0,1 uv run --script serve.py \
--model-path /path/to/target \
--speculative-draft-model-path /path/to/draft5. 開発者は配布形式から選べばよい
ローカル開発を始めるなら低精度チェックポイントとColab用資料を、データセンターでサーバーを立ち上げるなら2枚のGPUを使う実行案内を出発点にできる。公開された重みと実行例を併せて提供し、モデル選びから自らの運用へとつながる経路を用意したことが、今回の公開の実用的な変化だ。
Ripple-65B Previewは、コーディング性能の競争をローカル配備につなげつつ、モデルを収める容量と実行時の演算量を併せて考慮させる選択肢だ。
